第1回 『カズはなぜメンバーから外されたのか』(1998.8.11)

世界を”知る者”と”知らない者”との間の大きな壁
融合不可能だった「カズのイマジネーション」と「岡田監督の理論」

 

『イマジネーションを大切にしろ』。カズの持論。
監督の言うこと(戦術)をやるだけではいけない、自分の発想やイメージを大切にしろ、ということだ。
アジアにとどまらずブラジル、イタリアなど世界の舞台で戦ってきた経験が言わせる「W杯で勝つために必要なこと」。
スイス入りしてからカズは仲間にこれだけを言い続けてきた。
カズは言う。
「戦術も大事だよ。でも(サッカーは)人間がやるもの。
戦術通りにはならないことが多い。
その時、イメージはすごいプレーを生む。
意外性からあるから、サッカーはエキサイティングで、ファンを魅了する。
ロナウド(ブラジル)みたいに1対1で突破するのも、(彼の)イマジネーションからきてるんだ」

日本代表監督・岡田武史は、データに基づいた戦術にこだわった。
チェスのように、戦術をまず机上で考える。
選手は”駒”だった。
守備的な布陣に対する不満分子もあったが、岡田にはそれを押し黙らせる頭脳と、『整然とした理論』があった。
岡田は言う。
「(監督としての)キャリアがないぶん、理論に頼った。
(自分にカリスマ性がないため)だまって俺についてこい、はできなかった。
選手をいかに信頼させるか、それには経験が大きな役割を持つと思う」

世界をあまり知らず、経験の少ない監督・岡田は『理論』を最重要視した。
世界を知り尽くした経験豊かなカズは『イマジネーション』を大切にしたいと考えた。

両者が融合することはなかった。

●写真・その他の無断使用はご遠慮ください。

BACK