突然、緊迫した声が背後から飛んできた! 「ダメ、ダメッ! そこは危ない!」その声に思わず足を止め、ゆっくりと自分の足元を見た瞬間、全身が凍り付いた。KAZUが住むザグレブから東へ約280キロ、クロアチア第4の都市、オシエクの北方。その一帯にはいまだに無数の地雷が埋設されている。91年9月に勃発した独立戦争時、ユーゴスラビア連邦軍とクロアチア共和国軍が対峙(たいじ)した場所で、96年1月まで緊張状態にあった。98年1月に全面武装解除し、クロアチアに返還されて国同士の争いは終わった。しかし、戦時に対立したセルビア人とクロアチア人が混在して住むこの地域では小さな争いが頻発している。首都ザグレブでは人々の胸の奥深くにしまい込んでいる戦争の傷跡が、車で数時間走ったここでは、日常にある。
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