いま、私はナメルナよ、といった心境でいる。…。
おかしなことは、カズ外しから始まった。
カズだけは何があっても外すべきではないと、連載を通じて主張してきた私は、ただガク然として言葉もない。
チケット取引の件もそうだが、わがジャパンはサッカーW杯がいかなるものか結局、最後まで、監督までもがわかっちゃいなかった。
そのことが戦いを前にしてバクロされてしまっては何をかいわんやであった。
シャンゼリゼ通りで出会ったブラジルのサポーター連から、カズはどうしたと問われ、事情を話すと、うちひとりは目を潤ませる始末。
クロアチアのザクレブはボバン(主将)のバー・レストランで、ミウラはどうしたのかと尋ねる画商に会った。
世界的にみて、たったひとりしか知られてない、その人物を日本代表から外して一体どうするのかね、と私のほうから先に自嘲したものだ。
ただそれだけでも華のない淋しいW杯になったというのに、チケット詐欺が追いうちをかけたのである。
欧州に来てつくづく感じるのは、サッカーに対する注目度がわが国の比ではないことだ。…。
わが国は、そのスポーツ界最大の祭典かつ、戦場をどう考えてきたのか。初出場に浮かれたのはやむを得なかったにしても、いささか世界を甘く見てはいなかったか。…。
おもしろみのない試合運び、没個性的なパスに頼るだけのチームは、まるで現代日本の有さまとそっくりだ。…。
日本代表はいったい何のためにW杯を戦うのか。
クロアチアは民族の誇りと国家の栄誉のためだ。そんなチームに勝てるはずがなかったことをトクと考えてみることも無駄ではあるまい。
初出場の教訓は、日本サッカーの長い道のりが再び始まったこと。それに尽きる。
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